手紙
人の心に響く手紙があります。
それも,短いが故に人の心に響く手紙が。
例えば,ローマのカエサルが腹心のマティウスに宛てて書いた「来た 見た 勝った(veni vidi vici )」という手紙は,短い手紙として世界的に有名です。韻を踏んだラテン語の名文としてもよく知られているようです。
若かりし頃,私は,一通の短い手紙を受け取りました。
その当時まだ法学部助教授だった奥島孝康先生から届いた手紙でした。
「猛勉! 猛勉!! また猛勉!!!」
書かれていたのはその三言だけ。
司法試験受験に失敗したある年の秋のことです。
言うまでもなく,教え子の私を叱咤してくれたのです。
奥島先生らしく,一切の修飾語を排し,直裁に叱咤激励する言葉でした。
万年筆による太く力強い筆跡が,今も鮮やかに蘇ります。
この手紙は,その時,私の心の奥底まで届き,私の心を響かせました。
早稲田で出会った奥島先生は,こうして,いつまでも私の心に残る恩師であり続けています。
(KT)